土用コラム②
第2回「土用に頑張る私たちのからだ」
<第2回 土用に頑張る私たちのからだ>
さて、前回のコラムでは、土用についてのお話をしました。
今回は、土用に頑張る私たちのからだについてお話しします。
前回、夏の土用は夏と秋の転換期といいましたが、体感的にはこれからが暑さの本番といったところ。
二十四節気でも「大暑」と呼ばれる時期に突入する頃です。
それを考えると、本当にもう夏から秋に移行を始めているの?と思いますよね。
でも6月21日に夏至が過ぎ、自然界は確実に陽から陰へ転換を始めているんです。
実際、朝陽が昇る時間も毎日1分くらいずつ遅くなっています。
この時期の不調といえば、むくみやだるさ、湿疹、水虫の悪化などなどありますが、
とりわけ「夏バテ」をどうにかしたい、といったところでしょうか。
でも、どうしてこのような症状が出てしまうのでしょう。
この土用の時期に、私たちの身体の中で一番活発に働いている五臓は
「脾」と中医学では言われます。
脾という言葉は聞きなれないと思いますが、
具体的に目に見える臓器ではなく、
私たちの消化器系全般を指すものと思って下さい。
脾はたくさんの役割を担っているのですが、
その中でも重要なのは、私たちが取り込んだ食物から、動いたり呼吸したりするための活動のエネルギー(氣血)を作り出すこと。
その役割が上手に機能できない時に、上に書いたような症状が起きてしまうのです。
では、どんな生活が脾を弱めてしまうのでしょう。
夏…といえば、アイスクリーム?ビール?かき氷?冷えたスイカ…?
もうお分かりですね。
特に冷たい食べ物や飲み物の取り過ぎには要注意。
脾は湿度にとても弱い五臓なのですが
梅雨が明けたこの時期は、本来は湿度も落ち着き、脾にとっては過ごしやすい季節のはずです。
が、外気の暑さのために、私たちはついつい冷たいものを欲してしまいますよね。
すると体の中では、見えないところでとんでもないことが起きるのです。
蒸気機関車で例えてみましょう。
私たちの「脾」をボイラーとすると、石炭は「食物」、そしてそこから生まれる力強く走らせる馬力(エネルギー)は「氣血」といえます。
私たちが冷たいものをたくさん飲んだり食べたりすると、ボイラーの火に冷たいものを浴びせているようなもので、その火力(脾の力)は衰え、いくら石炭をくべても(食べても)、どんどん馬力(気力)は落ちてしまいます。
もっと分かりやすくするために、今度は別の例えで見てみましょう。
私たちの脾で、小人のような小さなパートのおばちゃんたちがたくさん働いているとします。
イメージしてくださいね。
どんなに冷たい物を食べたり飲んだりしても、 トイレに行った時に出るものは温かいですよね。
それは脾で働くパートのおばちゃんたちが、私たちが冷たいものを体に入れるたびに、
必死にそれを抱えて温めているから。
やっと温めて、次の五臓へ役割をバトンタッチ。でももう疲れてクタクタです。
そこに今度は別の冷たいものが体の中へ入ってきたら…。
もうびっくりです!パートのおばちゃんたちは「また来たー!」と目を白黒。
弱りながらも一生懸命冷たいものを温め続けます。
トイレに行けばいつでも温かいものが出るのは、そういうこと。
(あくまでもイメージです)
でも、そんなことばかりに必死になっていると、脾の本来のお仕事まで手が回らなくなってしまうのです。
脾の大事な役割を覚えていますか?
私たちが活動するためのエネルギー(氣血)を作り出すことでしたね。
脾が弱まると、この氣血を作り出すことができず、気虚や血虚といわれる状態になり、
元気がなくなったり、貧血などが起きやすくなります。
さらに消化器系が冷えるということは、
体内にたまった要らない水分を飛ばす熱も足りなくなるということ。
それなのに外気の熱は高いため、体の中はどんどん湿気でいっぱいに…。
湿気に弱い脾は、追い討ちをかけられ、もうノックダウン寸前です。
浮腫みも悪化し、スポンジが水を含んだように、身体が重だるくなっていきます。
これがいわゆる「夏バテ」の状態。
氣血は、私たちの生命活動を維持するために非常に重要なものです。
脾はその氣血の源ともいえる存在。
土用の時期に私たちの体の中で頑張る「脾」について、いかがでしたか?
少し伝わったでしょうか。
いつも必死に働く脾のパートのおばちゃんたち。
しっかり働くべき時に本来の大切なお仕事を頑張れるよう、私たち自身が脾を応援してあげられるといいですよね。
次回は、「土用の丑の日、ウナギの日」について。
どうして土用にウナギを食べるといいと言われるのかな。
本当にこの時期にウナギを食べると元気になるのかな。
そんなお話を。
それはまた。
Kotoyoga
密山ことみ