土用コラム⑤
第5回「土用のココロの養生法」
<第5回 土用のココロの養生法>
前回は、土用に働く脾にやさしい食養生についてお話ししました。
最終回の今回は、土用のココロの養生についてお話したいと思います。
私たちの体には、五臓と呼ばれるエネルギー(氣血)を貯蔵するタンクがあります。
そしてこの五臓は私たちの感情とも密接につながっていると中医学ではいいます。
五臓が調っている時は穏やかな感情も、
五臓が乱れて不調になればコントロールが利かなくなったり、
特定の感情だけが著しく表れてしまったりします。
また同じ感情を持ち続けている場合も、
その感情につながる五臓はどんどん弱ってしまうのです。
土用の脾は五行で土の性質をもっていると第1回目のコラムでお伝えしました。
土の性質とは「受容して変化させる」こと、でしたね。
この土の性質が弱まるということは「受容できず、変化させられない」ということです。
ここからくる土~脾の感情は「くよくよ思い悩む」感情。
「どうしよう・・・」
「でも・・・」
「あの人はこう言っていたし・・・」
「やっぱりこっちの方が・・・」
「もごもごもごもご・・・etc.」
思い当たる方、「脾」の働きが低下気味かもしれません。
胃腸の調子はいかがですか?
口唇ヘルペスや唇が荒れやすくなってはいませんか?
堂々巡りに悩み続けることで、さらに「脾」を弱めてしまいます。
もちろん前回までのコラムで書いたような生活習慣から
五臓が弱まり、感情のコントロールが利かなくなることも考えられます。
何か気になる感情や症状に気づいた時は、
原因がどんなところにあるのか、
自分の生活を振り返ってみましょう。
五行説と同じく中医学の考えのベースとなる陰陽論。
季節が巡るように、陰と陽は常に動いて止まることがありません。
感情だけが前へ進めず置き去りになっていないか、
まずは気づいてあげることが大切です。
そして第4回目のコラムでも土用にプラスして夏の養生についても触れましたが、
今回のココロの養生についても、もれなく触れておきましょう。
夏に活発に働く五臓は「心」(心臓)。
この心は「火」の性質を持っていて、熱く上昇するエネルギーを持っています。
夏のココロの養生で大切なのが、感情をおもいきり表現する!ということです。
心は他の五臓の君主的な存在。王様です。
その他の五臓が持つ感情、「怒り」「喜び」「憂い」「悲しみ」「恐れ」…
それらを発散せずにため込むと、
行き場所がなくなったエネルギーで心はどんどん熱くなります。
そして、その熱で心を取り囲む私たちの肺を焦がしてしまうのです。
夏の終わりや秋口に、乾いた咳が止まらなくなることはありませんか。
夏はとにかく、大いに感情を表現しましょう!
自然界で植物が夏に大きな花を咲かすように
私たち人間も夏に「感情」を通してそれぞれの花を大きく咲かせるのです。
暑いー!
キャンプ楽しいー!
BBQ楽しいー!
アイス美味しいー!
ビアガーデン最高―!!!!
あれ?前回までのコラムと矛盾しませんか?と思ったそこのあなた。
物事に「絶対」はありません。
陰陽は見る基準、角度を変えることで、様々な捉え方ができます。
100 vs. 0の思考を取っ払いましょう。
そして、体をいたわるやさしい気持ちはそのままに、
竹のようにしなやかなココロを育てていくのです。
みんなで食べるアイスクリームも、
冷たいビールも
子どもと食べる真っ赤なシロップのかき氷も
食べる時は罪悪感をもたず、素直に喜びながら大いに楽しんで感謝していただくことです。
楽しい夏の思い出が、
これから迎える静かな陰の季節、
秋と冬を乗り越えるための大切な栄養となります。
もちろん体に負担はかけてしまうので
きっと顔は浮腫むでしょう
おなかを下すかもしれませんし
夏バテの症状も感じるかもしれません。
そんなときは
「無理させたね」「ごめんね」「ありがとう」と
労わる気持ちで、やさしくケアすることを忘れずに。
そうやって、「わたし」と「からだ」は
話し合いながら、助け合いながら、いたわり合いながら、
二人三脚で生きていくのだと私は思います。
中医学は生きる知恵。
そして静かに体と向き合う時間はマインドフルに溢れる時間。
それは幸せの道へと繋がります。
皆さんが、より自分自身を知り、「こころ」と「からだ」と繋がることで
幸せな日々を送ることができますように。
土用コラム全5回、最後まで読んで下さった方、ありがとうございました。
何か一つでも参考になることがあれば幸いです。
上手に暑い季節を過ごし、また新しい季節を元気に迎えて下さい。
中医学は幅が広く、そして奥の深い学問。
まだまだここに書ききれないこと、
お伝えしたいことはたくさんあります。
秋にはまた「やさしい中医学入門×陰ヨガWS」を開催予定です。
みなさんにお会いできることを楽しみにしています。
それではまた。
Kotoyoga
密山ことみ